玄関からヘンな物音が聞こえるとお姉ちゃん達が食堂を出て行きます。
一人遅いお昼ごはんを食べていたぎんも、玄関へ行ってみました。
音の原因は
ベベちゃんでした。
オデコを押し付けて、ドアを押し開けようとしているのです。
「ベベちゃん お外へ出たいのじゃない?」 そういえば、ベベちゃんが迷子になるのが心配で、最近はドコにも連れて行ってませんでした。
そっかぁ ベベちゃんだってお出掛けしたいよね('_'*) 残ってたお蕎麦をツルンとすすって、さっそく午後のお散歩に行くことにしました。外出の準備をするぎんの横で、お姉ちゃんがちょっとドアを開けた途端・・・
「ぁ、ああーッ べべが逃げ出した!」 ものすごいスピードでべべちゃんが走り出しました。みるみるうちに姿が小さな点になっていきます。
たいへんッ!
慌ててぎんも、後を追いかけます
「べべちゃーーんッ べべちゃぁああん」 一体、どうしたというのでしょう?
ぎんは半べそになりながら大きな声で叫びました
「待ってぇ 逃げてっちゃダメー うわぁあああん(T◇T) ・・・・ぁ、あれ?」 中央市場の付近で 急に止まり、べべちゃんは振り返ってキョトン?としています。
ぎんが追いつくまで そのまま待っててくれました。
「うわぁん>< べべちゃん驚かせないでよぅ」
ププゥッ? ぎんが追いついたのを確認して またべべちゃんが走り出します
「待って、待って; ドコ行くの?」 見失わないようにぎんも また駆け出します。イズルードの橋を渡り、小さな丘を越えて、プロンテラ南門へ向かって一直線。
そのまま門を潜るのかと思ったら、ここでUターン。今度は砂漠方向へ向かってベベちゃんは走っていきます。
プップップー フッ! プップップー フッ! 玉の汗を浮かばせて、ちいちゃなべべちゃんがリズミカルに走ります
砂漠の入り口で、またUターン。今度はイズルードの丘に向かって逆戻り
結局、これを三回繰り返して ベベちゃんはやっと止まってくれました。
ゼイゼイ息をついてるぎんの横で、ベベちゃんもプフプフと鼻を鳴らしています。
「あそこでお水飲も?><」 イズルードに流れ込む川のほとりで、ふたりは並んでお水を飲みます。
綺麗で冷たくて・・ああ美味しい♪
さっきまでチョット苦しかったのに、今は心臓のパクパクする音や温まった体が気持ちいい。
「べべちゃん、明日もちょっと走ろっか?(^^*)」
プゥ♪ 次の日から ぎんは、べべちゃんと駆けっこをしてからお仕事に出掛けるコトにしました。
そんな駆けっこを繰り返していたある日、いつもより早い時刻にべべちゃんがドアを小突き始めました。
今朝はまだ、朝ごはんも済んでいません。しかたないので二人分のお弁当を包んで、出掛けるコトにしました。
べべちゃん 今日はソッチなの?
いつも渡る橋とは反対方向の、飛行艇乗り場へ向かっています。
「飛行船に乗りたいの?」 ぎんはカバンにしまってた乗車券を確かめました。まだ3枚残っています。きっと、もっと遠くの町へ出掛けたくなったのでしょう?でも、どこまで行きたいのかな?
ジュノーに付いた飛行船を降りて、べべちゃんは反対側の乗り場へ向かいます。反対側はシュバルツバルドの国際線。まだ、ぎんも一度しか行ったコトがない他所の国です。
飛行船の中も遠くへ狩りに行く人たちで賑やか。ギュウギュウ詰めの甲板の隅っこに寄って、ぎんはべべちゃんに耳打ちしました。
「ネ、ネ? リヒタルゼンってゆー国に行ってみる?ぎんね、この間、そこに行ったのよ」
ぷぅぷぅ~・・
え?ダメなの?('_'*) べべちゃんは飛行船ガイドさんが告げる国の名前をジッと待っているようです。
「お待たせしました まもなくフィゲル村に到着いたします」 プゥ! べべちゃんの大きなお返事に周りの乗客がチョット笑いながら道を空けてくれました。
フィゲルって? どんな村なの? なにがあるの? 飛び立っていく飛行船を見上げながら、ぎんは初めての国を空気を思い切り吸いました。
近くに見える山々、流れている小川。それに町の方からは何だか楽しげな音楽が聞こえてきます。
なんだか のんびりしてて楽しげな国かも(^^*) 村は小さな小道沿いに色んな出店が並んでいて、観光客も散歩しながら屋台を冷やかしています。
「アレなぁに?ふうせんだって!」 話しかけるぎんをそっちのけで、ベベちゃんはしきりに何かを探しています。
プー! 何かを見つけたベベちゃんが横道に入っていきます。その道の奥には人が大勢集まっていました。
「お待ちかね! まもなくモンスターレースシングルがスタートします!!」 もんすたーれーす?なんのコトかしら・・・ 会場には、何本かにゾーンを区切った大きな柵があって、30メートル程の距離があります。よく見ると沢山の色んなペットモンスターが集まっていました。モンスター達は一匹ずつ、コースに別れてスタートの合図を待っています。
「わぁ♪ コレって駆けっこ競争だね」 周りの見物人は、一番早くゴールするモンスターを予想してチケットを買っているようです。ぎんもさっそく、その列に並んでみました。
「おや、そこのちいさなお嬢さん。お連れのペットでレースに参加してみませんか?
飛び入り大歓迎ですよ」 係員のバッヂを付けたおじさんが、ぎんとベベちゃんに声をかけてきましたよ?
呼びかけを待ってました!とばかりに、ベベちゃんがおじさんの前に歩み出ました。
「もしかして、べべちゃんはレースに参加したいの?だから毎日走ってたの?」
ぷぅ♪
あれは追いかけっこじゃなくて トレーニングだったんだ 「はい、そちらのサベージベベが参加ですね。じゃこちら契約書にサインを。
大丈夫、レースが終わったら無事にお返ししますよ。」 係員のおじさんに抱き上げられて、ベベちゃんはゲート奥へと連れられていきました。
果たして大丈夫かしら・・・?
お話は【後編】へ続きます
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