選手控え室に行ったべべちゃんを見送ってから、ぎんはチケット販売所へと移動です。
もちろん買うのは、ベベちゃんの番号札です。だって、毎日あんなに駆けっこしたんだもの。きっと、いちばん早いに違いありません。
会場では、先のレースが行われてる最中でした。
コースには魔法で色んな障害物が仕掛けられていて、ペットモンスター達は必死で前へと進もうとします。
バネにぶつかって後ろに戻されるルナティック
トラップにひっかかって動けなくなるバフォメット
目を回してクルクル回転するポリン
観客は自分が選んだモンスターに向かって、ワアワア!と大きな声で声援を飛ばしています。
「 イケイケイケー!! お前に賭けてるんだぞー 」
「 止まるなぁぁ うわああ 走ってくれぇ;; 」 番号札を握り締めて、腕を回して追走する人
イライラしながら立ち上がったり、座り込んだりを繰り返す人
ポーカーフェイスで眺めてる人
ぎんの他にも、だれかべべちゃんの札を買ってくれた人はいるのかな?
ぎんと一緒に応援してくれるのかしら?それとも興奮して怒ったりするのかしら?
わぁぁ;大丈夫かな?>< ぎんもコースの周りをソワソワソワ。屋台に並んだ焼き菓子もオモチャも目に入りません。
いよいよベベちゃんの組が回ってきました。3番目のゲートに並んだベベちゃんは鼻息を鳴らして真剣そのものです
「がんばってー ぎん、ここにいるよ~」 果たして、ぎんの声は届いてるかしら?
べべちゃんはお鼻をプクッと膨らませて合図を待っています。
「位置に付いて。よぉおい・・・・START!!」 プッフーー! 毎日の練習と同じように、猛ダッシュしたべべちゃん! 両隣りのペットと並んで走りだしたのに、急に立ち止まりました。ああ罠に引っかかっちゃったみたいです。
ジタバタ必死でもがいているのに、罠から体が抜け出せません。そのまま、お隣のルナティックがゴ~ル
「やぁやぁ、あと一息でしたね~ もう一度参加しますか?」 ぷぅ! 柵の向こうで悔しがるベベちゃんを見て、ぎんはもう一度契約書にサインしました。
「位置に付いて。よぉおい・・・・START!!」 プププフゥーッ 「3コースのサベージベベ選手、勢いよくダッシュしたのは良かったが~あぁ、ココで残念!」 途中までトップだったのに、ああ今度は方向を見失ってゴールへ逆戻りです。
プゥッ ぷうぅう><
「 もっかいべべちゃん 走らせてください! 」 パァーン!と号砲と共に、今度は探るようにゆっくりとべべちゃんが走り出します。真ん中までは順調!・・ところが
ぷぅ・・・プススス~♪ 途中で仕掛けられた睡眠魔法に気持ち良さげに、寝息を立て始めました;
「 眠っちゃ駄目!>< 起きてーーッ 」
「一着は1コースのポリン選手でーーす」 パパーーン! 目を覚ましたべべちゃんが、途方に暮れた顔で観客席を振り返りました。キョロキョロとぎんの姿を探しています。
・・・こんな時は、どんな言葉をかけてあげればイイの?
ぎんと目が合った途端、べべちゃんは、うつむいて、また走るために戻っていきました。
渡された契約書に躊躇いながらサインをして観客席に戻ると、大きな野次が飛んでいます。
「 なんだぁ?あのサベージベベ、全然駄目じゃないか~?」 悔しくって言い返そうとした、その時
「 あのサベージベベちゃんを応援してるの? 」 優しい女の人の声が、お隣から聞こえてきました。
狐の襟巻きを巻いたきれいな女の人です。
「 うん。ウチの子なの。一生懸命、毎日練習したのに頑張ってるのに、一回も勝てないの><」 泣き出しそうなぎんを見て、その人はアラアラと微笑みました
「 そうですか^^ じゃあ魔法の言葉を教えてあげましょう 」 魔法の言葉?
その人は、ウィンクしながら人差し指を揺らしました。
「 フレーフレー、です」 ふれーふれー? 「 昔、遠い東の国では この言葉で応援したの。魔法のコトバですよ^^ 」 初めて聞く言葉。ぎんは口の中で その言葉を繰り返してみました。
「 さあスタートしますよ。大きな声で フレーフレー! 」 ぎんは思い切り息を吸い込むと その魔法の言葉を叫びました
「 フレーッ フレーッ 」
「 もっと元気よく ハイっ 」
「 フレーッ フレーッ べべちゃーーん!」
「 もっとリズミカルに ハイっ 」
「 フレーッ フレーッ べべちゃん!フレーッ フレーッ べべちゃん! 」 その時、その会場にいた誰よりも大きな声で ぎんは願いを込めました
がんばれ がんばれ がんばれ がんばれーー>< 「各コース共、ここまでは横一直線!おっと6コースバフォJrが逆走したゾ~、さあココで2番3番が前に躍り出ましたッ」 ベベちゃんが必死の形相で前へ前へと進みます。罠にかかっても諦めず前へ前へ!隣に抜かれても前へ前へ!
「3コースのサベージベベ選手、すごい勢いですッ 止まりません止まりません!! コレはイケるかぁ??」 一瞬、ぎんは周りの歓声が聞こえなくなりました。
聞こえるのは自分の心臓の鼓動と、ベベちゃんの鼻息だけ・・・
「サベージベベ!まもなく、まもなく、まもなく・・・・・ごぉおおおおおるうーーー」 パパーーンッ! べべちゃんの頭上に祝砲が鳴り響きました
ベベちゃんの優勝です
「やったーっ おねえさん ・・・ あれ?もう居ない?」 振り返ったとき、あのおねえさんの姿は どこにも見当たりませんでした。
ぷっぷ~♪ ぷっぷっぷぅう♪ 控え室外では得意げに鼻を鳴らして ぎんのお迎えを待っていました。
契約書と共にべべちゃんを返してもらい
ご褒美のメダルを枚四枚受け取ります。
「良かったねー(^^*)べべちゃん 」 帰り道、門の外で蝶の羽を取り出したぎんに べべちゃんが大きくかぶりを振り また飛行場へと走っていきます。
今度はドコへ行くのでしょう?
次にべべちゃんとぎんが降り立ったのは
アインブロック。
べべちゃんは またキョロキョロと何かを探しています。
「ケホンケホンッ ここ、ちょっと煙たい町だね;
あの工場の煙突からモクモクと煙が出てるよ」 大きな煙突を見つけたベベちゃんが工場の中へと入っていきました。
あれあれ工場ってナニがあるのでしょう?
追いかけていくとベベちゃんが 誰か知らない人の傍にいます
「やあ こんにちは^^ メダルを持ってきてくれたんだって?」 油で鼻の頭を黒くした男の人がにこやかに ぎんに話しかけてきます
「メダルってこれですか?」 さっき受け取ったメダルを差し出すと、工場の人はしっかりと受け取りました。
「うん コレだよ。コレは大切な材料になるんだ。」
('_'*) べべちゃん よく知ってたねえ
「メダルのお礼は・・・・女神よ、この者に祝福をお与えください」 ・・・・・??・・あ! 男の人が祈りを捧げた途端、ぎんの体に不思議な力が満ちていきます。
こ・・これって!? 誰かのお願いや、困っている人を助けると、そのご褒美に女神様が成長する力を授けてくださる事は聞いていました。ぎんは、たった今、その祝福を受けたのです。
ちょっと強くなってちょっと立派になったぎんを見上げて、べべちゃんが満足そうに頷いています。
そんなベベちゃんを見て、ようやっと色んな謎が解けました
べべちゃんがレースに勝ちたかったのは ぎんに、この力をプレゼントするためだったんだ・・・・ 思わず、べべちゃんにギュッと頬ずり
大好きだったベベちゃんのコトが もっともっと大好きになりましたよ
おうちの一番目立つトコに飾ることにしたのよ(^^*)