ワンワンワン う・・? ベッドの中で目覚めたぎんは、辺りを見回しました。お部屋の中は真っ暗、まだまだ真夜中です。
どうして目が覚めちゃったのでしょう?
・・・・誰か ぎんのコト、呼んだ? なんだか、胸がトキトキ鳴ります。
なんだか、誰かが呼んでるよーな気がします。
「 ベベちゃん ・・・ぎんのコト呼んだ? 」 枕もとの
べべちゃんの卵に耳をくっ付けると
ぷしゅ~ ププププ・・ぷす~♪ 安らかな寝息が聞こえてきました。
ベベちゃんは、ぐっすり眠っています。
誰だろう? ぎんの胸のソワソワは止まりません。
カーテンの隙間から、窓の外を覗いてみると 遠くに中央市場の明かりがキラキラと輝いています
・・・・・('_'*) そぉ~っと部屋のドアを開けて、そぉ~っと足音を忍ばせて
玄関のドアから外へ・・・・・冷たい夜の空気がぎんの肌をチリリと刺します。
こんな真夜中過ぎに 一人で外に出たのは初めてでした。
カボチャランプを頭にのせて、とりあえず中央市場まで行ってみましょう
クゥーン・・・クゥーーン ・・・やっぱり 子犬の鳴き声がします
「 まあ ぎんねこさん こんな時間にお出掛けですか? 」 夜勤の
ソリンさんが、ぎんに気付いて声をかけてくれました。その傍では、
アコライトの女の子が泣きじゃくっています。
「 アコさん、泣いてるですか? 困ってるですか? 」
「 ええ; ご兄妹で狩り中に、モンスターに襲われて はぐれてしまったそうなのです。」 こんな真夜中に?
ちょっと驚いたけど、
迷子と聞いて一安心。だって「蝶の羽」があれば、どこにいても街に戻って来れるのですから。
「 お、おにいちゃっ・・蝶のは、ね もってなっ・・ない、いつもっ アタシがっ ぽ、ぽた・・・ポタだしてたから~ 」 ありゃりゃー><
それは困りました。蝶の羽を使わずに戻れるのは、アコライト職を経験した者だけなのです。
ユキちゃんと名乗ったアコさんの嗚咽が、更に激しくなりました。
よく見ると、肩のフードが焼け焦げています
「 怪我しちゃったですか? だいじょーぶ? 」
「 う、ううんっ おにい、ちゃが かばってくれたからっ
でも、ポタだせなくて おにいちゃ・・が、あたしにテレポでとべってい、言って
でも おにいちゃ、が う・・ うぅ 見えなくなった のっ!」 「 どうやら彷徨う者と遭遇してインティミされたようですよ; 」 救急箱を取りに行った門番の兵士さんが戻ってきました。
彷徨う者、それは人間に襲いかかり 一瞬にして違う空間へと連れ去る亡霊。 ユキちゃんは一人で迎えに行こうと、何度もグラストヘイムへ向かい 入り口で声を限りにお兄ちゃんの名前を叫んだのだそうです。
でも中には 他のモンスターも一杯いて、ユキちゃんを襲ってきます。
とうとう力尽きて、なんとかイズルードへ戻ってきたのが少し前。
「 どなたか他の冒険者さんがいらっしゃればいいのですが・・・」
「 プロンテラに連絡を取りますか? ただ、あちらも通りを歩いている人は少なげです 」 ソリンさんと門番さんが相談している間も
クゥーン・・・キュ~ン ぎんの耳に また子犬の悲しげな鳴き声が聞こえてきました。
いま、相談している間にも、傷ついた剣士さんが どこかで助けを求めて待っているのです。
ぎんは、泣きじゃくるユキちゃんを励まします。
「 心配しなくてイイのよ ぎんがお迎えに行ってくるね(^^*) 」 ビックリした顔で、三人が三人とも振り返りました。
幸いなコトに、倉庫にお姉ちゃん達の防具が揃っています。沢山の美味しいお魚とハエと救命道具を積んで行けば、ぎんだって助っ人になれるハズ!
「 了解しました>< これはカプラ社の総力をもって バックアップ致します。ジョンダ社に協力を要請しますね 」 ソリンさんの紹介を受けて、ぎんはプロンテラ大通り十字路のジョンダ社特派員さんの元へと急ぎます。
「 カプラ社からの連絡を受けてます。こちらでグラストヘイム直行路を開きます。お代は結構、お気をつけて行ってらっしゃい 」 指示された位置に立つと、ジョンダさんが何やら交信を始めました。
「
只今入っています現地の情報は 気温19度 天候曇り
座標369:303 到着予想時刻は 03時11分06秒
入り口付近にモンスターの影は見当りません
輸送開始 Over!」 一瞬、まわりが真っ暗になって・・・・
気が付くと、ぎんは
グラストヘイムの門の前に立っていました。
「 ガガ~ ピー ぎんねこさんを確認しました。輸送完了。
・・・・ピピっ ザーッ 」 どっから声が聞こえるの??('_'*)? 薄暗い闇と不気味な静けさに包まれたグラストヘイム。
ぎんは息を潜めながら、壁際にそって歩きます。
石の階段を、音を立てないよーにカートを運んで・・・
深遠の騎士影が見当たらないか? ガーゴイルの翼の音が聞こえないか?
慎重に慎重を重ねて、やっと 入り口へ辿り着きました。
どうやら、ここが ユキちゃんたちが居た
グラストヘイム室内のようです。
「 ユキちゃんのおにいちゃーん・・・ドコにいるですか? 」 耳をすますと・
・・・クゥン・・・クンクン・・・ 子犬の声が奥から聞こえてきます。
コッチかも! 見つけたッ 「 ユーリさん? 」 壁にもたれ掛かった剣士さんが、ぎんの声にうっすらと目を開けました
「 コレ飲んで! 白ハーブのポーションよ 」 少しずつ頬にも赤みが戻ってきたのが判ります。
あぁ一安心
手渡した もう一瓶を飲み干してから、剣士さんは改めてぎんをマジマジと見つめます。
「 キミは誰? どうして、こんな処に居るの? 」
「 イズルードから来たぎんねこなの。ユキちゃんから聞いて、あなたのお迎えに来たの 」
「 ユキが? じゃ、無事に街に辿り着いたんだね? 」 剣士さんの肩から、ホ~ッと力が抜けたようでした。
「 さ、魔物に見つかる前に、いそいで逃げなくちゃ! 」 ぎんが蝶を取り出した途端
ぱしん! ユーリさんがぎんの手を払いのけて ギッと睨み返します
「 ボクは逃げないよッ? 」
「 でも、みんな心配して待ってるの; ぎん、ユーリさんを連れて帰るってお約束したのよ? 」
「 まだ、アイツがいるんだ・・・・ 」 ひぃ>< ユーリさんが示す方向を見て、ぎんは腰を抜かしそうになりました。
ユラユラと青白い陽炎を立ち上らせ、腰に長い刀を差した半骸骨が 獲物を探して辺りを見回しています。
あれが彷徨う者!? 「 アイツは ボクの、妹を 傷つけた 」 顔を覆ってたユキちゃんの手の甲には、深いみみず腫れがありました。
キリリと唇を噛み締めたユーリさんが、ゆっくりと立ち上がります。
「 ボクは 何があっても アイツを倒さなくちゃいけないんだ 」 しっかりした足取りで、ユーリさんが亡霊に近づきます。
人間の生気に気付いた
彷徨う者の動きが、ピタリと止まりました。
気付かれた! 刀を大きく振り上げた、禿げ骸骨の背中に向かって ぎんは飛び出します
エーイ! >< 目を瞑って カートごと体当たり!!
すかッ!
やっぱ、ハズレたッ; 床にズッコケた ぎんの手を引っ張り、ユーリさんが壁の裏へ駆け込みます
なんでか ぜんぜん当たらない; これじゃー
助っ人にはなれません。
ぎんってば、助っ人に来たのになぁ
自分の無力さに凹んでると、頭の上から クックックッと押し殺した声が聞こえてきましたよ?
見上げると、ユーリさんは さっきまでとは打って変わった優しい顔です。
「 キミ、結構勇気があるんだね。見直しちゃった 」
・・・・・ユーリさんが笑ってる~('_'*) ちょっと咳払いをして、ユーリさんが耳元で囁きます。
「 アイツの攻撃には 一定のパターンがあるみたいなんだ。それが理解できれば、対処できるんだけど 」
「 一定のぱたーん? 」
「 そう、ヤツの攻撃が読めれば ぜったいボク達が勝てる! 」 ちょっと相談して、ぎんが
囮になることになりました。
ソロリソロリと、ヤツの背後に近づいて・・・
袴をチョン♪
ギョロリと振り返った、禿げ骸骨の空洞の目が、こちらを貫きました。
ぴゃあッ ぎんは、
カートを盾にして、禿げ骸骨の腕から身を守ります。
カートにはお魚やら、白Pやら、武器やら、べべちゃんのご飯やら・・・もぉ、とにかく いーっぱい詰め込んであるのですから。
そう簡単には持ち上がらないハズ!
たぶん! きゃあきゃあ 悲鳴をあげて、禿げの攻撃をかわしていると ユーリさんが剣を振り回しながら走ってきました。
「 やい 禿げ骸骨! 今度はコッチだ 」
新たな獲物の姿に、彷徨う者が ぎんから離れていきました。
ユーリさんは 素早い動きで魔物を部屋の奥へと誘います。
どうやら 上手く撒けそうですよ?
無事に一人で戻ってきたのを確認して、
今度は ぎんがユーリさんを安全な壁の裏へと導きます。
彷徨う者は ユラユラと体を動かしギョロギョロと、ぎん達の行方を探し回ります。
「 だんだん動きが読めてきたよ 」
「 ホ、ホントーッ? >< 」 ユーリさんは剣の柄で 床を叩いてリズムを刻みます。
「 タンタン・タタタン! 一歩さがって タン!
前に踏み込んで タタタンタタン!」 ぎんも見習って、そのリズムに合わせて動いてみます。
カートをお尻で押して 一歩後ろへ!キュッ! すぐに前へ出て チェインをブブブン!
二人の動きが初めてピッタリ合いました
「 よしッ イケる! 」
「 うんッ イケるです! 」 次に、禿げが背中を見せた時がチャンス
「 よしッ 今だーッ 」 キィイインッ ユリさんの剣が 禿の刀とぶつかり 火花が散りました
ぎんは禿の刀の柄を目掛けてチェインを振りかざします
「 来るよッ 一歩バックして 」 禿の腕が ぎんに向かって伸びてきたのを すかさず交わします
よしッ ここだ!
後退したぎんとクロスして ユリさんが禿の懐へ飛び込みます
「 エックス攻撃! ヤーーッ! 」 剣が魔物の胸を切り裂く音が聞こえました
当たった! 「 また来るよッ 前に踏み込んで! 」 腕から逃れるユーリさんとクロスして ぎんはチェインを振りかざします
「 タァァァっ 」 ぽこん! ぎんのチェインが、禿の肩をえぐりました
ガキィンッ!
カン!
きゅきゅッ ごつん!
キンッ!
ぽこんッ! いったいドレだけの時間が経ったでしょう?
ふいに、目の前の亡霊が床に崩れ落ちました
!! 足元にゴロンと骸骨が転がっています。
「 た、、倒した! 」
「 うんッ 」 建物の外へ出ると、二人は ドッと座り込んでしまいました
柔らかな朝日の中のイズルード
「 おにぃちゃん! 」 駆け寄った妹の頭をユーリさんが撫でながら慰めています。
自分が大変だったのに・・・・ お兄ちゃんって大変だなぁ(^^*) 眺めていたぎんの肩をポン!と叩かれました。
振り返るとソリンさんと衛兵さんが微笑んでいます
「 ただいまデス(^^*) 」
「 おかえりなさい^^ そして有難うございました 」 それは、いつもの挨拶とはチョット違う
『労いの言葉』でした。
「 また来てね! 」
「 今度は 剣の使い方を教えてあげるよ 」 家に辿り着いた ぎんが そ~っと玄関の扉を開けると・・・・
「 くぉらッ! ぎんッ 」 鬼のよーな形相で
モンお姉ちゃんが仁王立ちで待ち構えていました
「 真夜中に黙って どこに遊びに行ってた!? 」 あわわ~;;
「 えとえと; 女の子の泣き声してて、ワンコの剣士さんが浚われて ほいでもって 」 「 ぎんちゃん・・・夢遊病? 寝ぼけて、お外に出ちゃったの;? 」 上のお姉ちゃんが心配そうに 暖めたミルクを差し出します。
一気に飲み干した途端、おおきな欠伸が出てしまいました。
「 ソレ飲んだら、もーいっぺん ベッドに戻りな? 」 背中を押されて、ベッドに追い込まれて・・・
「 困った妹だなぁ も~ 」 「 おねえちゃぁん(^^*) ぎんが 魔物に浚われたら、助けにきてくれるぅ? 」 「 あー、ハイハイ 」 適当な返事をしながら モンお姉ちゃんは、ぎんが目を瞑るまで傍に居てくれました。
《出演協力》ユキちゃんとユーリさん 長いコトお待たせしました。