プロンテラの西から歩いて、ぎんは迷宮の森の門の前に辿り着きました。
初めて入る森の中。いったい何が待っているのでしょう
恐る恐るアーチの下をくぐります。アーチの向こう側は、プロの森と何ら変わりは無いように見えました。
一度後ろを振り返ってから、また ゆっくりと進みます。
ファブルが足元を横切っていきます。
目の前をクリーミーが飛んでいきます。
木々の間から、鳥のさえずりや風が渡る音が聞こえてきます。
緊張していた身体から、ホッと力が抜けました。
なぁんにも怖い感じがしませんよ?
もう一度、後ろを振り返ってから歩き出したぎんは ギクリと足を止めました。
あ・・れ・・? 今 目の前に
『赤いキノコ』があったのに
あ・・れ・・? 慌てて周りを見ると、ついさっきまでの景色とは違っていました。
迷宮の森の中は、ある位置からワープします。
そして、それはランダムに起きるのです
教授達が書いた
『迷宮の森レポート』の出だしを思い出しました。
つまり、一度歩いた場所には簡単に戻れなくなるのです。
すーーー・・ は~~~ッ 胸に手を当てて深呼吸
ぎんの胸あたりに、
可愛いお守り袋がありました。
ちぇりー先生が渡してくれた蝶の羽が入っているお守り袋です。
何があっても、この巾着は手放しちゃ駄目ですよ?^^
そして、これがある限り ぎんねこちゃんは、無事に帰ってこれますからね? すーーーー・・・・ はぁ~ッ もう一度大きく深呼吸すると、ぎんの中から不安が少しずつ消えていくのが判りました。
大丈夫! ぎんは ちゃんと森の中で頑張れる! チョットいきなり早いけど、
オヤツ休憩をする事に決定です。甘いお菓子を食べれば、いつだって元気が出てくるのです。
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教授達が作った『迷宮の森マップ』と照らし合わせながら ぎんは少しずつ歩いていきます。
調べ終わったエリア内には、目印に木に
赤いスカーフを巻いていけばOK。この赤いスカーフの目印があれば、緊急時にハエで飛んでも大丈夫。
赤いスカーフが一枚は 安全地帯
赤いスカーフが二枚あれば チョット危険地帯
赤いスカーフが三枚あれば お泊りする安全地帯
生息しているモンスターをノートに書き込みながら、ぎんは注意深く先へと進んでいきます。何度か、
おサル軍団にも襲われたけど大丈夫!ぎんは何だか、どんどん楽しくなってきましたよ?
マップの書き込みを1/3埋めた所で、今夜の
『お泊り地点』の確保に向かいます。いくつか候補を挙げていた地点までハエ飛びを繰り返して・・・
ここだ~♪ 着地したのは、
三叉になってるエリア。ここはルナティックとファブルしか見当らないポイントです。でも、いきなりハンターフライが飛んでくるかもしれません。大きな樹の下にカートを留めて、その後ろで隠れて様子を伺います。
30分経過・・・60分経過・・・ 夕飯のお寿司を食べながら、いつでも飛べるように待機。
2時間経過・・・どうやら本当に安全地帯の様子。太陽も沈んで、森の中は、どんどん薄暗くなっていきます。
カートの上に燃えないカボチャランプを置いて、ぎんは早めに眠るコトにしました。
「 明日、早く起きてがんばろう・・・ 」 ※----※---※---※---※---※----※
二日目。
朝日が昇ったと同時に目が覚めたぎんは、朝ごはんを急いで食べて さっそく調査を開始しました。
黙々黙々、どんどんどんどん
ポイントを確認して、モンスターを書き込んで
黙々黙々、どんどんどんどん
目印つけて こんどはアッチを調べてみて
ノートの書き込みが増えていくのに合わせて、ぎんが胸に手をあてる回数も増えていきます。胸には、あの巾着袋。
お帰り用の蝶の羽が入っています。
「 ・・・・・・・・ 」 一日が終わって戻ったお泊りポイントで、
夕飯のピザを握り締めたままボンヤリ
まだ真っ暗じゃないけど・・・眠ろうかな
そしたら明日が早く来るかも※----※---※---※---※---※----※
三日目
「 あ、また ココに着いちゃった 」 マップの半分以上を埋め終わった今日は、
まだ行ってないポイントへハエ飛びを繰り返しています。
そういえば、オヤツ食べてないや・・ オヤツどころか、お昼のご飯も食べていません。急いでマップ全部を埋めたくて、時間を惜しんで飛び回って調査していたのです。すっかりフラフラになった頃、森に夕日が沈み始めました。
「 とりあえず何か食べなくちゃ; 」 カートの中を探っていた手がピタリと止まりました。カートの隅っこに入れた憶えの無い荷物が入っています。
桃色の小さな紙包み・・・表面に
『 ぎんへ 』と文字が書いてありました。このまん丸い文字は、
お姉ちゃんが書く字です。中には、
青ポーションと万能薬が入っていました。
「 ・・・お姉ちゃん('_'*) 」 よく見ると反対側にも紙包みが・・・この殴りつける様な文字は、
モンお姉ちゃんが書いた字です。こちらには
キャンディが入ってます。
「 モンおねえちゃん('_'*)・・・ 」 思い出さないよーにしてたけど、ベベちゃんは何してるかしら?今頃、みんなも晩御飯を食べてる時刻です。いつもなら、お風呂に入ってポカポカになって、お喋りして過ごす時刻です。
・・・・・・・ 食べかけの
蒸し饅頭に、ポツンと濡れたモノが落ちました。
あ・・・いけない; ぎんは急いで、目尻を擦ると 大きな口を開けてお饅頭をパクン!と頬張りました。それなのに・・・・
また 涙がポロン
コシコシ! ぎんは慌てて目を拭きます。
ぱくんッ ポロン・・コシコシ
ぱくんッ ポロロン・・コシコシコシ
拭いても拭いても涙が零れてきて・・・
「 うぅ・・・ヒック・・ふぇ~ん 」 間に合わなくなって とうとう、ぎんは泣き出してしまいました。
ガサッ
ふいに目の前の茂みが大きく揺れました
ガサゴソソ!
なぁに? モンスター?どうしよう?? 大きな黒い影が、目の前に立ちふさがります。
逃げようとしたぎんは、その姿を見てビックリ!
あれれ・・? 突然 茂みの中から
女の子が現われましたよ??